「……あーんは……ちょっと」
長い前髪を触りながら、私はなんとか震え声を吐き出した。
込みあげてくる、恥ずかしさ。
体と一緒に椅子まで震わせている私に、猫系王子様は気づいてくれたみたい。
「このチョコムース、総長が作ったの?」
スキップで、カウンター横までやって来た環くんは
「めっちゃ美味しそう。俺、チョコ味のものって大好物なんだよね~」
目をキラキラ。
顔はニヤニヤ。
総長様の許可が下りていないにもかかわらず、満面の笑みでムースを手のひらに乗せている。
「ちょっと待て、環にはやらないから!」
「ダメって言われても、俺は食べるもん」
「あのなぁ!」
「あれ? 総長は甘い食べ物が苦手って聞いたよ。ちゃんと味見はできたの?」
「好んで食べないだけだ。うまいかマズいかの判断くらいできる」



