「これ、昨日の夜に作っておいたんだ」
トレイをカウンターに置き、ニヤつき総長様が手にしているものは……
「ムース……ですか?」
「チョコ味にしてみた。甘いものを食べると、いい曲が浮かぶんじゃないかと思って」
えっ? 私のために?
昨日の深夜。
1階から物音がしたような気がして目が覚めた。
気のせいかなと思って、すぐ夢の世界に戻ってしまいましたが。
総長様が、お菓子作りをしてくれていたんですね。
今朝も早起きをしてくれたみたいだし。
大丈夫かなぁ?
睡眠が足りないせいで、学校で倒れないといいけど。
「姫歌は甘いもは好き? チョコムースは食べれる?」
総長様の問いかけに、じわじわと込み上げてくる喜び。
真っ赤になったであろうほっぺを横髪で隠しながら、私は頷いた。



