あいつら、どれだけ姫歌に沼ってんだよ。
……って。
「俺が一番ズブズブいっちゃってるか」
盛り上がった生クリームの山にイチゴを乗せながら、俺は自分自身に突っ込んでしまっている。
女嫌いだったころの俺は、他人が愛おしいなんて感情は芽生えたことがなかったけれど。
命をかけてでも守りたい女がいるっていうのも、悪くないな。
幸福感をかみしめたくて、俺は甘酸っぱいイチゴを口の中に放り込む。
人生で初めて、誰かの運命の人になりたいと思った。
好きな人の笑顔を生み出す、サンタクロースになりたいと思った。
その相手が、花園姫歌なんだ。
姫歌はまだ、絢人先生のことが好きだ。
環も帷も直月も強力なライバルで、喧嘩では負けなしの俺でさえ、姫歌が奪われないか心配でたまらない。
でも、絶対に負けたくない。
人生で初めて好きになった女を、俺は生涯、愛し抜きたい。
俺の手で、俺の温もりで、姫花を幸せにしたいんだ。



