こっちに来る。
サラふわな髪を揺らす、無表情の環くんが。
客席の中央当たりの通路を、一段一段のぼりながら。
なんで私、すぐ横が通路の席に座っちゃったかな?
席を立って逃げる?
今ならまだ間に合うし。
ひゃっ、そんなことできない!
真っ暗な客席に、天井からスポットライトが降り注いでいる場所が1席だけある。
そこに座っているのが、この私なのです。
まぶしすぎ。
たくさんのお客さんの視線が、360度私に突き刺さっているよ。
どっどど、どうしよう……
前髪をカサカサと瞳の前に集め、不安で肩を揺らしながら座っている私。
私の真横の通路に、ついに環くんが到着してしまった。



