――今まで以上に、他人と関わらないようにしよう!
心の痛みを教訓に変え、うんうん頷きながら廊下を歩く。
ふいに込み上げてくる、失恋の辛さ。
すれ違う同級生に涙目を見られたくなくて、うつむきながら足を速める。
自分の教室の前を通り過ぎようとした時、私の足は止まってしまった。
誰もいないと勘違いしてしまうほど、静かな教室。
窓際の席に座り、片側のほっぺを机に張りつけ寝ている男の子がいる。
話したことすらない彼だけど、名前は知っているよ。
同じクラスだし。
高校2年生の珠須島 環くん。
表情筋をあまり動かさないから、彼は無気力系に分類されちゃうかな。
のほほんとしていて、マイペースで。
笑ったりもするけれど、面倒くさそうな表情をしていることが圧倒的に多くて。
寝てばかりいるから、気まぐれな猫っぽいと女子に大人気。



