「だから?」

きゅっと優しく、でも簡単には振り解けないくらいの絶妙な力で握るシロの手から、じわりと熱が伝わってくる。


「ぁ……。だ、から」

真っ直ぐな視線に吸い込まれる。

決してそんなことはないとわかってるのに、まるで咎められているかのように錯覚するのは、私にやましい気持ちがあるからだ。


「……」
「……」


先に視線を逸らしたのは私だった。

やけに賑やかな音楽とはしゃぐような声が響き渡る中、互いに無言でどれくらい経ったのだろうか。


「……行こっか」

繋がれたままだった手を引かれて、促されるがままシロの少し後ろをついて行く。


どんな顔をしてるかなんてわからないのに、ゆっくりとした歩調が私に合わせてるんだと気づいて、またひとつ胸に甘い痛みが広がった。