その優しさでとどめを刺して


「うそでも、本当でも、どっちでも。美嘉の好きなように考えていいよ」

「……っなに」


すっと離れて行く身体に、あれだけそばに居てと願っていた気持ちが嘘のようにほっとする。


同時に今の顔を見られたくなくて、もう少しだけ夢のような時間に浸っていたくて、バラバラになりそうな感覚を必死に繋ぎ止めていた。


痛いほどまっすぐな目が私を見つめる。

視線を逸らすことは許さないとばかりに見つめあった後、ふとその瞳が柔らかく緩んだのだ。


「俺が美嘉を好きな事実は変わらないから」

「……ぇ」

「だから、美嘉の好きな時に考えてくれればいい。もし考えたくないんだったらそれでもいいし」


今度こそ完全に離れた身体に、冷たい空気がさっと頬を撫でる。