「あっ、抜けた!」
子竜は動いてそこから抜け出した。先程捕獲をした子竜と違って元気なのか、そこからかなり敏捷に逃げていく。まさか、そこまで元気だとは思わず、飛竜から降りている3人は子竜を捕まえられない。
「待って、駄目、駄目よ!」
ナターリエは慌ててそれを追い、なんとか捕まえた……と思えば、それは、重たい魔獣を囲っていた飛竜よりも外に飛び出てしまっている。
「あ……!」
目の前に、目覚めた魔獣がいる。子竜を胸に抱いて、ナターリエは後退った。
「ナターリエ!」
後ろからヒースが走ってきて、ナターリエの体をぐいと引き寄せる。飛んでいる飛竜に乗っている騎士団が、魔獣の前に手槍――柄が細く短い槍――を投げて足止めをし、ナターリエを襲わせない。
「早く乗れ!」
「はいっ!」
どすっ、どすっ、と投げ槍が地面に刺さる音が聞こえる。何発も撃たなければいけないほど、魔獣がそこに迫っているのだとナターリエにもヒースにも緊張が走る。
「うわっ!?」
既に2体は上空にあがっている。ヒースとナターリエが飛竜にようやく乗って飛ぼうとすると、ドン!とその脇腹に魔獣が突進してきた。それへ、普段温厚な飛竜がカッとなったようで「グワアアアアオオオオオオ!」と咆哮をあげた。
「わあああああ!」
ばさりと羽ばたくと、足でその魔獣を蹴る飛竜。空を飛ぶ、というよりは、飛んで戦う、という雰囲気で魔獣を見ている。
「ちょっと……!」
ナターリエは子竜を抱えて、必死に鞍についている取っ手を掴む。飛竜が荒れ始めてヒースも手こずっている様子だ。
「おい、ちょっと……もうそいつはいいから、飛んでくれ……!」
飛竜は荒っぽく咆哮をあげた。
「わかった、わかった、今日は、沢山飛びすぎたのはわかってる! 明日休みにするから、頼む!」
「ええっ!? そういうことですか!?」
「わからん。わからんが……」
次の瞬間、飛竜はふわりと飛び上がる。ようやく上空へと向かい、安定をした飛行に入った。
「ええ~? ヒース様がおっしゃったこと、わかっているのかしら……?」
「いや、たまたまじゃないか……おい、本当にわかってるのか?」
もう飛竜は何もなかったように飛ぶだけだ。すると今度は……
「あっあっあっ、痛い、やめてやめて……! いいいいい痛い!」
「ナターリエ嬢!?」
「あああ、痛いいい、駄目です、駄目、爪は駄目ですう、歯も駄目です、あっ、いたたた!」
ナターリエが抱いている子竜が暴れている。慌ててヒースは「全員撤退! のちに、リューカーンの谷間に向かう!」と叫び、まずは古代種のエリアから脱出をした。
「ナターリエ嬢、大丈夫か」
「うう……」
子竜はバタバタと暴れていたので、仕方なくもう一体と共に檻に入れた。ナターリエは指や腕、胸元などを引っかかれ、噛まれ、髪を食べられ、ボロボロになっている。
「げ、元気で、何よりです……」
「それだけ言えるなら、まあ……」
可哀相に、とヒースはナターリエの髪を撫でた。ナターリエは、ヒースの前で静かにそれを受け入れながら、頬を赤くしてじっとしているのだった。
子竜は動いてそこから抜け出した。先程捕獲をした子竜と違って元気なのか、そこからかなり敏捷に逃げていく。まさか、そこまで元気だとは思わず、飛竜から降りている3人は子竜を捕まえられない。
「待って、駄目、駄目よ!」
ナターリエは慌ててそれを追い、なんとか捕まえた……と思えば、それは、重たい魔獣を囲っていた飛竜よりも外に飛び出てしまっている。
「あ……!」
目の前に、目覚めた魔獣がいる。子竜を胸に抱いて、ナターリエは後退った。
「ナターリエ!」
後ろからヒースが走ってきて、ナターリエの体をぐいと引き寄せる。飛んでいる飛竜に乗っている騎士団が、魔獣の前に手槍――柄が細く短い槍――を投げて足止めをし、ナターリエを襲わせない。
「早く乗れ!」
「はいっ!」
どすっ、どすっ、と投げ槍が地面に刺さる音が聞こえる。何発も撃たなければいけないほど、魔獣がそこに迫っているのだとナターリエにもヒースにも緊張が走る。
「うわっ!?」
既に2体は上空にあがっている。ヒースとナターリエが飛竜にようやく乗って飛ぼうとすると、ドン!とその脇腹に魔獣が突進してきた。それへ、普段温厚な飛竜がカッとなったようで「グワアアアアオオオオオオ!」と咆哮をあげた。
「わあああああ!」
ばさりと羽ばたくと、足でその魔獣を蹴る飛竜。空を飛ぶ、というよりは、飛んで戦う、という雰囲気で魔獣を見ている。
「ちょっと……!」
ナターリエは子竜を抱えて、必死に鞍についている取っ手を掴む。飛竜が荒れ始めてヒースも手こずっている様子だ。
「おい、ちょっと……もうそいつはいいから、飛んでくれ……!」
飛竜は荒っぽく咆哮をあげた。
「わかった、わかった、今日は、沢山飛びすぎたのはわかってる! 明日休みにするから、頼む!」
「ええっ!? そういうことですか!?」
「わからん。わからんが……」
次の瞬間、飛竜はふわりと飛び上がる。ようやく上空へと向かい、安定をした飛行に入った。
「ええ~? ヒース様がおっしゃったこと、わかっているのかしら……?」
「いや、たまたまじゃないか……おい、本当にわかってるのか?」
もう飛竜は何もなかったように飛ぶだけだ。すると今度は……
「あっあっあっ、痛い、やめてやめて……! いいいいい痛い!」
「ナターリエ嬢!?」
「あああ、痛いいい、駄目です、駄目、爪は駄目ですう、歯も駄目です、あっ、いたたた!」
ナターリエが抱いている子竜が暴れている。慌ててヒースは「全員撤退! のちに、リューカーンの谷間に向かう!」と叫び、まずは古代種のエリアから脱出をした。
「ナターリエ嬢、大丈夫か」
「うう……」
子竜はバタバタと暴れていたので、仕方なくもう一体と共に檻に入れた。ナターリエは指や腕、胸元などを引っかかれ、噛まれ、髪を食べられ、ボロボロになっている。
「げ、元気で、何よりです……」
「それだけ言えるなら、まあ……」
可哀相に、とヒースはナターリエの髪を撫でた。ナターリエは、ヒースの前で静かにそれを受け入れながら、頬を赤くしてじっとしているのだった。