翌日、朝からルッカの町に飛竜3体で向かった。ヒースと、フロレンツ、そしてもう一人の騎士とだ。

 ルッカの町は、リントナー辺境伯の長女であるベラレタが責任者となっており、大きな関所が設けられている町だ。とはいえ、森を抜けて王城に行くまでは時間が相当かかるので、関所を抜けた者たちの多くはルッカの町、あるいは森を抜けた辺りにあるマルティン侯爵領付近での商売をする。

「おお、ヒース様だ!」
「ヒース様!」
「ヒース様の飛竜騎士団だ!」

 町の上空から下降をすると、飛竜に向かってやってくる人々が何人もいる。邪魔だな、と笑いながら、彼らを巻き込まないように少し離れた場所に降りる。木々に囲まれている平地で、飛竜3体ならばなんとか順番に降りられるぐらいの大きさだ。

「もっと町近くで降りたいのに、人が群れて来て叶わん」
「人気者はつらいと言うことです」

 フロレンツの言葉にナターリエは「人気者なんです?」とヒースに尋ねた。

「おう、人気者だな。飛竜が」

 そうヒースが答えると、一同は笑う。

「飛竜騎士団が、というより、飛竜の人気があるので……ほら、子供たちがやってきました」

 フロレンツがそう言うと、木々の間を抜けて子供たちが走って来る様子が見えた。

「ヒース様!」
「わあ、飛竜だ!」

 確かに飛竜が人気なのだ、とわかって、ナターリエは笑う。

「みんな、飛竜を怖がらないのですね」

 そうフロレンツに言えば

「以前は怖がっていましたが、今はまったく。飛竜も気性が穏やかですから。ただ、野生の飛竜にも手を出すのはどうかと思いますので、そこが難しいですね」

 との返事。ヒースは子供たちの頭を撫で、それから飛竜に一人ずつ触らせる。

「わあ、お姫様だ」
「こんにちは。お姫様ではないけれど」
「こんにちは」

 ナターリエを見つけた子供が声をあげる。飛竜に触った後は、今度は珍しいものを発見とばかりに、ナターリエの周囲に集まる。

「ヒース様のお嫁さん?」
「んんんんっ……」

 言葉の豪速球を受け、ヒースは困惑の表情を見せた。

「いや、違うが、そう見えるのか」

 そう聞けば、逆に子供たちが「見えない」と答えるのだから、一体どういうことなのか。子供は勝手なものだ。フロレンツともう一人の騎士は笑い、ナターリエは困ったような表情を見せる。

「どういうことだ!」
「ヒース様のお嫁さんかと思ったけど、どっちかというとフロレンツの方が似合うと思う」
「はあ!?」
「なるほど、見る目がありますね」
「なんだ、お前もなんでいい気になってるんだ?」

 ヒースがフロレンツを怒っている間、子供たちはナターリエのドレスを引っ張る。

「町に行こう! みんな、ヒース様を待ってるよ!」
「まあ、そうなの?」
「ベラレタ様のところに行こう!」

 子供達に手を引かれ、ナターリエは先に歩き出した。飛竜三体を騎士一人に預け、ヒースとフロレンツも、その後ろを歩きだした。