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朝は菫が食器洗いを終えたら、菫は桜と一緒に学校に向かう。


徒歩20分程で通える学校だ。


高い定期代を親に払ってもらうのは申し訳ないと菫は思い、近場でそれなりに進学率の良いこの学校を選んだ。


「桜、ちゃんと付いておいでよ。」


菫は桜に声をかけて歩きだす。


運動部の菫と文化部の桜では歩幅にも差がでる。


菫が様子を見ながらでないと、いつの間にか桜との間にどんなに頑張っても埋められない距離ができてしまう。


だから、菫はいつも桜の様子を伺いながら登校するようにしていた。


別に置いていっても良かったのかもしれない。


学校が近付けば、高校でできたそれぞれの友達が、それぞれに挨拶をしてくるから、結局最後は一緒に校門をくぐらない。


でも、置いていったら桜は泣くだろうから。


小学校の頃を思い出し、菫は苦笑した。


朝、珍しく喧嘩をして桜を置いて学校に行ったのだ。


登校班のない学校だったから、桜は菫と喧嘩をして泣きはらした目のまま学校までトボトボと歩いていた。


学校が近付き泣き止まなきゃと思うのに、どんなに歩いても菫がいなくて、桜の瞳からはまた涙が溢れてきた。


最後は校門の前で大泣きして、菫がその当時の桜の担任に呼び出され、慌てて桜を迎えに行き、抱きしめてやったら泣き止んだという話。


昔から桜は自分に嫌われたり、置いていかれたりすることをひどく怖がっていた。