馬車に乗っても目は開かず、セーラは沈黙を続けた。療養を優先し、急いで聖女屋敷に舞い戻ることとなってしまった。


セーラの私室前の廊下で、マオはビンビンに指示を与えた。


「セーラには僕が話を聞くから、ビンビンはデュオにお茶の用意をさせて」

「はい、伝えます」


ビンビンが杖をついてすごすごとその場を離れた。マオがセーラの私室に静かに入る。

セーラは部屋に入ってきたマオを黒い瞳でまっすぐ射抜く。もう発光石人間の光で眩んだ目は治った。


「マオ、座りなさい」


凛々しく唇をきゅっと絞ったセーラの緊張した面持ちに、マオは胸が躍った。


(やっと、セーラに叱ってもらえる)