腕の中できゃんきゃん喚くセーラに、マオは真顔になった。ドキドキするからやめて、なんて、もっとしてと同じ意味だ。
「今、もっとしろって言ったよね?」
「はい?!」
「僕の聖女、無敵すぎるんだけど……完敗だよ。ダメだけどもっとしてってズル過ぎない?」
誰の下手にもでない魔公爵マオを震撼させられるのは、聖女セーラのとびっきりの素直さだけだ。
「ちょっと心の準備するから待ってて。もっとキスするから」
「マオちゃぁあーん!聞いてるー?!しないでって言ったんだけどー?!」
「マオ様」
王城の廊下でやんや揉めていると、義息子のデュオが現れて無表情で美しい礼をした。
凛と涼しい無表情が定番のデュオは、マオの右腕であり、秘書だ。誰にでも愛想がよいマオと大違いの不愛想である。
「出発の準備ができました。ビンビン様もお待ちです」
「ありがとう、デュオ」
「今度はどこ行くの?」
「セーラに石人間を見せたいからデュオに準備させてたんだ。行こうか、石人間のお家」
「石人間の……お家?」



