ビンビンが瓶底眼鏡を押し上げて、マオの笑顔の前に口を噤んだ。
(ビンビンちゃんはマオに従う立場なのか)
マオ椅子にてセーラがビンビンとマオの上下関係を見ていると、客間にもう一人男性が入ってきた。
「マオ様、遅くなりました」
「ああ、セーラに改めて紹介するよ」
「ありがとうございます」
(せっかく男前なのに無愛想で損するタイプと見た)
セーラは100年たったマオの周りの人間観察に余念がない。
落ち着き払い過ぎてもはや無表情のデュオが手を上げると、他の使用人たちはそそくさと退室した。
デュオは会釈してからビンビンが座るソファの隣に座る。
するとビンビンが顔をパッと上げて、顔を紅潮させながらデュオに声をかけた。
「デュ、デュオ様、ごきげんよう」
今まで無表情を貫いてきたデュオが、ビンビンにだけ微笑みを返す。
「ビンビン様もお勤めご苦労様です」
「はい……」
セーラの前で繰り広げられる会話の一つ一つで今のマオと、相手の位の高さが見えていった。
今のところまだマオが下手に出た相手はいない。
(マオったら、立派になってる……!)



