『魔王は、厄災です。


この島国の大地から生まれた悪意の存在であり、人間を襲い殺すことに快楽を見出す。命尽きるまで悪行を繰り返してきた歴史があります。


魔王は聖女様の楔でしか殺せません』


なかなかハードな聖女の役割を聞いたが、そこからアイビンの説明は急にふわっとし始めた。


魔王が誰で、

どこにいるのか、

いつ魔王に楔を打つのか。


それはフリープランだという。


『召喚士は魔王の脅威を予期して生まれます』

『アイビンのことね?』

『そうです。召喚士が成人するとともに聖女召喚は行われます。

ですが今はまだ

魔王の存在が確認されていません』


『今のところ魔王はいないけど、

召喚士のアイビンが成人したから

私が召喚されたってこと?』


『そうです!』


召喚士の杖を床にトンと突いたアイビンが生真面目な顔で言い切った。だが、セーラは首をひねった。


(それって、もしかして私っていらない可能性あるよね)


セーラは何かの間違いで召喚されたのではと思い始める。


『聖女と魔王は引き合います。しかるべき時に出会いましょう。

それまでこの島国の中で、好きにお過ごしください』


そんな経緯で聖女として召喚はされたものの、やるべきことがふわふわしたままだ。

聖女のお屋敷で崇め奉られているのもセーラの居心地が悪かった。


セーラはここにいる「意味」がないことに困っていた。


(私ってそうなんだよね。意味とかないの)