言葉を紡ぐ途中で涙が上がってきて、セーラは涙声になってしまった。
演技していたはずのマオは、セーラの純粋無垢な涙に釣られて、なぜが本当に鼻の奥が痛かった。
(僕は魔王として生まれたことを後悔なんてしたことなんてない。だって、魔王だったからセーラに拾ってもらえたんだ)
セーラの涙が黒い瞳の端から綺麗に一筋流れた。マオはその瞬間をしっかり心に刻んだ。
全部演技のつもりだった。
でもほんの少しだけ、魔王として疎まれてごめんという気持ちがマオの言葉には宿っていた。
魔王でなければ、イジメられたりしてセーラに気をもませることも、こんな大芝居打つことだってなかった。
マオだって、好きで大立ち回りしているわけではない。魔王に生まれて、セーラに迷惑をかけて、申し訳なく思ったことは嘘ではなかった。
『セーラ、僕が魔王でごめんね?』



