マオの全く演技に聞こえない痛々しい大声が、パーティ会場に響き渡った。
「まあ、聖女様に向かってそんなことを……?」
「以前からエルトン君の行為には疑問があったんだよ」
マオがエル豚にいじめられていることなんて、会場の誰もが周知だった。そして、マオが一度もやり返したことがないことも、皆が知っている。
それでも大人たちはマオを恐れていた。
しかし、今、会場で聖女に縋りついて泣き叫ぶ子どもは、本当にいたいけな可愛い子だった。ぽろぽろと聴衆の貴族たちの意見が零れる。
「大事な聖女様を侮辱されたら、黙っていられないだろうな」
「男ならむしろ黙ってる方がおかしい」
「正当防衛だ」
「愛情深い子だわ」
マオが大げさに子どもらしく泣く様子から、大切に育ててくれた聖女様を慕っていることがよく伝わってきた。
マオは涙をぼろぼろ零しながら、セーラのペラい胸に縋りついて胸の内をさらけ出した。
「でも、僕はセーラに魔法を向けてしまった。許されないことだよ。
こんなことをしてしまうなんて、
やっぱり僕は悪い魔王だったんだ!!」



