マオの冷たい声と共にナイフの襲来が始まる。だが、セーラが豚とマオの間に身体を割って入った。
「痛ッ?!くない?」
「セーラ?!」
セーラは豚を抱き締めて、ポークソテーにならないように守った。セーラの頭にはコツンとフォークの先端がわずかに当たって、豚お肉野郎は泣きながらすごすご逃げ出した。
「セーラ!」
(全然痛くない)
「ごめんなさい!ゲガした?!僕こんなことするつもりじゃ……」
セーラはマオがらしくない大きな声を出すので自分の額に手を当ててみる。だが、まるで傷などない。
なのに、マオは怯えた顔をして、歯の根がカチカチ音と立てている。
(ん?マオなら私が痛くなかったのわかってるよね?まさか演技?)
セーラのペラい胸に抱き付いて顔を上げて、マオが誰にも見えないように口の前で指を一本立てた。
(なにこれ?黙れ指示?)
「エルトンが、エルトンが、セーラのことを役立たず聖女って言ったんだ!」



