やっとマオの手が緩んで顔を上げると、すっかりセーラよりも大きくなったマオが蕩けるように優しく笑う。


「いやいやいや!もし100年もたってたら、マオが死んでるじゃない!」

「僕は魔王だよ?長寿なくらい当然じゃない?」

「納得ッ!」


ぎゃんぎゃん喚いては一人で納得してしまったセーラを、甘い食べ物のように恍惚と見つめたマオの目は今にも溶けそうだ。


日本人らしい黒目をぱちくりさせたセーラにマオは丁寧に跪いた。


「マオ?なんで跪くの?」


見目麗しく、胸は逞しく、声も低くなったマオが跪いてセーラを見上げる。


「愛してるんだ、セーラ。もう二度と僕の前からいなくならないって約束して」


セーラが育てた可愛い男の子が、突如大きくなって再登場!からの最速おねだりだ。


「あ、愛してる??」


神々しい光の下で跪く美男子に呆気にとられる。

迂闊にもときめいてセーラの胃が熱くなりかけた。


勝手に指先を絡められて「ゆびきりげんまん♪」とマオが歌う。



「今度いなくなったら、人間滅ぼす♡指切った♪」



セーラが育てた可愛い男の子は、魔王と呼ばれた忌み子だ。

セーラは思わず声を出して笑ってしまった。


「魔王ジョークだ!懐かしい!まさしくマオね!」

(僕はいつも本気だけど?魔王ジョークで済ませちゃうのが僕の可愛いセーラだよね)


セーラが育てた可愛い少年マオは、

正真正銘の魔王なのだ。



「今ではもう僕のことを魔王扱いする人なんて誰もいないんだよ。

だから安心して、

僕に愛されてね、セーラ」