この薔薇の指輪に、マオの100年の恋心と同じだけの年月が乗っている。
再会した日、「長かった」とマオは涙ぐんでいた。
一人で寂しくて泣いた日だってきっとあった。簡単な悪の道を選びたくなる日だってあっただろう。でもマオはずっとマオの胸に刺さった聖女の愛の楔だけを頼りに生きてきた。
(再会してからも、たくさん、待たせちゃってるんだよね)
すぐに純潔を奪えば少しは気がまぎれたかもしれないのに、マオはセーラのためにまた我慢を選んだ。
セーラが自分から、マオが欲しくてたまらなくなる日を待ち続けてくれた。
もうマオは何年セーラを待っているのだろう。
セーラが生きた時間よりもずっと長い時間を、マオはセーラを待っている。
さらに長引く洪水のせいで、またマオが一人で洪水の終わりを待つかもしれない。
(もうマオを待たせたくない。もう一人になんて、絶対したくない……)



