マオにとっては、人を傷つけないというセーラとの約束を破る方が重罪だった。深い愛を知り、それでも悪の道を選ばずに、理性の道を歩んだマオをセーラは誇らしく思う。
「そうでしょう?!マオってば本当にいい子だから!」
そうでしょ、うちの子いい子でしょ節を炸裂させて、セーラが目をくりくりして明るい声を出して全力で笑う。
「聖女様はマオ様を評価する語彙が少なすぎます」
「バカって言われた?!」
「お可愛らしいとお伝えしました。
手放しで信じ、あたり前に優しい。
そんな聖女様だから、マオ様は愛しておられます。誰にわき目もふらないまま、100年も想い続けるだなんて狂気の沙汰です」
「そう、だよね……」
散歩を終え、ビンビンがセーラの部屋でお茶を淹れてくれている間、セーラはソファに座って左手の薬指にはまる金色の薔薇の指輪を見つめていた。



