眼鏡を付け直したビンビンは窓の外、まだ人の高さほどの水位が流れていくのを眺めて眉をしかめた。
「私、愛する人が目の前から消えて、マオ様の立場になったとしてもマオ様のように正しい道を選べるかと考えると……怖くなってしまいました」
「どういうこと?」
「こんなに愛しい人がいると今まで知らなかったので。どこかわかっていなかった気がします」
ビンビンはもしデュオが目の前から消えて、悪事を働けば彼が帰って来ると言われたら、悪の道を選べずにいられるかと自信がなくなってしまった。
その究極の選択を前に、マオはきちんと善の道、セーラを裏切らない人を守る道を選んだ。
「マオ様の英断を、今では心から尊敬しています。
狂気のごとき、理性の持ち主ですよ」



