セーラは目に涙が溜まるほどいい子のマオの大人っぷりに感嘆する。
「赤ちゃんのときはあんなに癇癪が強い子だったのに」
「今でも癇癪は起こしてるよ?」
セーラとマオが膝枕でいちゃいちゃするソファの向こう側で、マオにぶん殴られてボロボロになった特大の豚ぬいぐるみをアイビンが掲げていた。
(マオはあの特大豚ぬいぐるみを殴り倒すことで発散してるなんて、すごい合理的)
アイビンが魔法をかけて豚ぬいぐるみを修復すると、またマオの部屋に放り込んでいた。
ぬいぐるみなら殴りたいだけ殴ればいい。
現状を飲み込み静かに微笑むセーラは、膝枕に寝転ぶマオの金色猫毛を撫で続ける。
「癇癪は外に出さない方法を覚えたんだ」
「どうしてそんな大人になれるの?」
「何でも押し付ければ要望が通るってわけじゃない。僕はセーラといるために人間社会で居場所を確立する必要があるでしょ?
そのための策略は生きるための必須事項だよ。強者でありながら弱者に見えてなくちゃ人間は安心できないから、時間をかけて信頼を」
「ちょ!ちょっともうすでに何言ってるかわからないくらい大人ぁ!」



