マオは「魔王」であることが広く知られていながらも駆除されていない状態だ。魔王を育てるという、国王よりも権威を持った最高位聖女の命令だからだ。


マオはどこにいても、畏怖され奇異の目で見られることを避けられない。


人口の5%が魔法使いだが、魔法を使う血筋は決まっており、魔法学校に入学するのはほぼ貴族だ。


悪戯盛りの貴族の同級生たちは、飛び抜けた才能を持つマオをやっかみ、人間とは違うことにちょっかいをかけ始めた。


ズバリ、神をも恐れぬ愚行。

斬新なる「魔王イジメ」だ。


「マオ!今日は誰にやられたの?!」


アイビンと共に帰ったマオは泥まみれでも、輝かしい爽やかな笑顔で微笑んだ。


「まあ、いつも通りのオフザケで」


セーラは泥で自分のドレスが汚れることも意に介さず、すぐにマオを抱き締める。


「エル(トン)の豚野郎にやられたよ?」

「その口の悪さ外で出してきてもいいよ?!」


金色猫毛を揺らしたマオはセーラの腕の中から、顔を見上げて笑いかけた。


「少しでも怖い魔王だと思われるような、魔王っぽい行動はしないよ、セーラ」

「ちょっと!うちの子が魔王どころか神々し過ぎるんだけど!ね!アイビン!」

「はい……さすがにもう私もマオの味方です」