マオの魔法によって呼び寄せられた人たちで、会場はいっぱいだった。誰もがあれは誰の声かとヒソヒソと噂話をする中、国王が鎮座する上階の玉座の側でビンビンは一人立っていた。


(国王様だけは、石化させません)


召喚士として護衛だ。ビンビンだけは耳の奥に響いた彼の声を聞き違えなかった。


(あれはデュオ様の声だった)


ビンビンは裏切られた事実と唇を噛みしめてぎゅっと召喚士の杖を握り締めた。戦闘態勢だ。


(もう誰も頼れない。頼れるのは無垢な聖女様だけ。

キス、してくれましたか聖女様)


何が起こるのか警戒しつつ緊張のピークを迎えるビンビンは、聖女が魔王に深くキスしたことだけを期待した。