あわあわし始めるセーラにマオがにっこり笑う。


「だってセーラに言ったら皆にバレちゃうから」

「言った方がいいでしょ?!」

「ダメだよ。大混乱で救える者も救えなくなる。静かに水面下で、全部丸く収めなきゃ」

「え、ということは、えっと」


散らばっていた情報に、マオが次々に答えをくれる。だが、セーラの頭の中の整理が追いつかなかった。白いドレスに乱れがないことを確認してマオはセーラの腰を抱いた。


「いっぱい考えてるの可愛いけど時間がないんだ。行こう、セーラ」


セーラはマオに腰を抱かれて一歩前に導かれた。ふと廊下の窓の外を見ると真っ暗で、聞いたことのないほどの轟音の雨音が響いていることに今さら気がついた。キスに夢中で気がつかなかった。


(ノアの箱舟では、大洪水が起こって世界は水に流されて……)


まだ混乱するセーラの手を引いてぐいぐい前へと歩いて行くマオの行く先はパーティ会場だ。


「パーティ会場に行くの?」

「そう。そしてようやく迎えるんだよ」

「もしかして、迎えるものって!」

「大洪水による人間の滅びさ」

「やっぱりぃ?!」


マオが人を滅ぼすことはないと確信はしていた。だが、別方面からまさかこんな唐突に世界の終わりジ・エンドが訪れるなんて、予想していなかった。