ピリピリなビンビンに見送られ、セーラは懐かしい聖女様降臨祭に向かうために部屋を出た。なぜ召喚されてすぐではなく、この時期なのかわからなかったが、今日と日を決めたのはマオだ。
もう残り少ない動ける人間の中で、公爵はマオだけだ。あとは国王と周辺の古い貴族とその家族、王城に住む使用人たちだけであり、一般人の生存者は皆無となっていた。
本日の聖女様降臨祭には、動く人間が全員集合することになる。全滅前の最後のパーティになるかもしれないなんて使用人たちの中でもっぱらの噂だ。
聖女だけが着ることが許された白いドレスを纏って、黒髪を美しくまとめ上げたセーラをマオが迎えに来た。マオは蕩けるように眉を下げて笑う。
「綺麗だよ、セーラ。誰よりも」
「あ、ありがとう、マオ。マオも誰よりかっこいいよ」
「こちらこそありがとう。淡い色の口紅が特別に似合ってる。始めて見た色だ」
「ビンビンちゃんが特別なものを塗ってくれたの」
「良い趣味だね」



