抱きしめ合って笑いあう二人は健やかだった。
だが二人を屋根の下から眺めていたアイビンだけは眉をひそめた。
(たった3歳で、わずかながらも天候を操るなんて笑えない……末恐ろしいと思う私が歪んでいるのか)
マオのおかげで洗濯は乾き、昼からは本格的に雨が止んだ。
陽だまりがあたたかいソファに座るセーラに、膝枕されたマオはトロンと眠りに落ちている。
まだ3歳のはずのマオの身体はすでに6歳の大きさだ。
言葉の発達も異常に早くて、話せば中学生と話しているような滑らかさがあり、教えてもいないのに字を覚えていて大人の本まで読んでしまう。
魔法も誰も教えていないのに、独自で操ってしまっている。
セーラの膝枕に寝転がり、優しく撫でられて眠るマオは無害だ。
だが、無邪気なマオを見つめて、ソファの前に立ったアイビンが言葉を濁した。
「魔王は大地より生まれ、人の二倍の速度で成長すると伝承にあります。
目の当たりにすると異常なことがよくわかります。聖女様、私は……マオが怖くて仕方ありませんよ」
アイビンの苦言に、セーラは耳が痛かった。



