セーラがどんなに耳を塞いでも響いて来る落雷の音にビクつけば、マオは金色の瞳を細めて抱き締める腕の力を強くしてくれた。 「雷は嫌」 セーラはぎゅっと目を瞑る。雷と共に掘り起こされる胸の痛みが口を突いた。 「両親の事故の日が、雷で。連絡を受けて、ずっと雷が鳴ってて」 要領を得ない言葉のツギハギだったが、セーラの言葉を一つも取り逃さないマオには想像がついた。 セーラは雷の夜に大事な人を喪ったのだ。雷の音は、大事なものが奪われる音。マオの知らないセーラの痛みが、今もセーラの中にある。