ビイビンは資料に埋もれるこの部屋で、持参した資料を取り出して床に並べた。


(マオ様が石化魔王である状況証拠は揃ってしまいました)


召喚士ほどの地位があれば、公式文書の類は全て閲覧できる。


ビンビンが取り出したのは「マオ公爵の公式行動記録」だ。公爵がいつどこでどんな仕事をしたのかが細かく記されたもので、仕事ぶりを国王に報告するための文書だ。


(この資料は10年前からずっと、デュオ様が作成しています)


ビンビンはこの記録に多数の「改ざん」があることに気がついてしまった。


(どうしても誤魔化しきれない不審な移動が多数あります。

そして正しくマオ様がいただろう場所周辺での、石化の乱発です)


マオの不審な行動を庇うように文書改ざんをしたのは、デュオだ。


(もう一歩、決定的な物が欲しいところですが……デュオ様は、間違いなく石化魔王に加担しています)


ビンビンはぐちゃぐちゃの資料室の中で、膝を抱えて頭を埋めた。


愛するデュオが、人間の裏切り者だった。


そんな真実を知ってしまった自分が憎らしく、知らないままの阿呆でいたかった。だがビンビンは、人間を守る召喚士だ。その責務に誇りがある。


(人間が滅ぶまで時間がありません。私が石化魔王を拘束なければいけません)


ビンビンは瓶底眼鏡を外したまま、凛々しい目をして立ち上がった。


(相手は魔王。策が必要ですね)