前にマオの部屋に来たときは話に夢中で気がつかなかった。寝室のベッドサイドには、透明のケースの中に金色の薔薇が丁寧に飾られていた。セーラが異世界に帰った日に、小さなマオが贈ってくれた、あの花だ。


(マオの部屋って思い出いっぱい)


懐かしい物がたくさんあるマオの部屋でも奇々怪々な紙の腐海の部屋で、セーラは椅子を発掘して座っていた。

手あたり次第に、マオが100年書き続けたというラブレターを読み始めたからだ。


(マオって本当に……私のこと大好きなんだ)


マオが6歳の頃から書き溜めたセーラ宛のラブレターには、可愛いものも多々あった。会いたいとか、寂しいとか、帰って来てとか、小さなあの子が書いたのかと思うと胸が痛み目が潤むものもたくさんあった。


だが、マオはもう大人になってからの方がだいぶ日が長い。


日付が最近のものになればなるほど、過激というかあられもないというか、欲情が切実に綴られていて顔を逸らしたくなった。

抱きたいとか突っ込みたいとか子作りしたいとか、9割はそんな感じで全部同じ意味だ。


(これをマオが勝手に読んでもいいという気がしれない!私がマオなら、一生隠しておきたいけど!?)