マオが蕩けた赤い顔を見せてくれるのはセーラの前だけなのだ。セーラの胸が内側から露骨にノックされてうるさかった。


「夜はちょっと仕事で行って来るね」

「マオはどこに行くの?」

「僕の公爵領でトラブルみたいなんだ。デュオに呼ばれたから、飛んで行ってくるよ」

「飛ぶ?」

「転移魔法。僕の魔法では、僕一人の質量しか転移できなくて、距離も限られるけどね」

「難しい魔法ってことね?マオって相変わらず天才!むしろできないことってあるの?」


セーラが手放しで褒めて笑うと、マオは眉を下げてかみ殺すように笑い返した。


「召喚士が使う、神力魔法はできないよ。

神力魔法ならもっとたくさんの質量を転移できるんだけど」