セーラが一回目の聖女であったあの頃は、みんなが聖女の育てた魔王だとマオのことを見ていた。
だが100年もたった今となっては、マオを育てたのが誰かなんて誰も知らないようだ。
「聖女様が魔王を育てた?」
セーラは嬉々としてマオの子育て話を始めた。
セーラが存分にマオ自慢を交えた5年間の育児を伝えると、風呂でもつけっぱなしだったビンビンの瓶底眼鏡がズレ落ちた。
セーラは先に湯を出て行ってしまったが、ビンビンはたゆんたゆんの胸を湯に浮かべて考え続けた。
(マオ様ってもしかして石化魔王を殺したいのではなく、聖女様にもう一度会いたかっただけなのでは?!)
そこまで考え至ったビンビンは、根本の疑問にたどり着いてしまった。
(あれ?そもそも、なぜ聖女様は二度も召喚されたでしょうか)
ビンビンの思考があっという間に走り出して止まらなかった。
(同じ聖女が二度召喚された例など、今までなかったはず)
セーラの魔王育て情報により、一つの綻びもなかったマオへの疑念が芽吹いてしまった。
(マオ様を殺すための聖女がセーラ様なら、
石化魔王を殺すための聖女は、別の方が召喚されるのが順当では?)
ビンビンのたゆんたゆんの胸がなぜかドクドクと嫌な音を鳴らして不安を煽った。
セーラが二度も召喚された理由は。
(マオ様が石化魔王だから?)
「ビンビン?」



