再び異世界?!─平凡聖女の育てた少年が、年上魔公爵になって貫く健気過ぎる激重純愛♡─



セーラは黒い瞳をぱちぱちさせて、隣に座るビンビンの瓶底眼鏡の奥を伺った。

瓶底眼鏡を持ち上げたビンビンは、不愉快そうに眉を下げる。


「雨量が異常に多いせいで作物の収穫量は年々激減しています。水害による土砂崩れの被害も甚大でした。

もし石人間たちが全員元気に過ごしていたら、食料の奪い合いが起きたでしょう」


ビンビンは神妙な声で述べて、黄緑色の長い髪を耳にかき上げた。


「人口のほとんどが石人間でいたおかげで……紛争は起こらず、乳飲み子たちも飢えずに済んだ、とも言えます。皮肉ですので、誰もこの件については深く言及しませんが」

「石化魔王の影の功績なんて誰も大きな声で語れないよ。さあ、作業に戻ろうか」


マオに促されて休憩は終了した。セーラは黒い瞳をぱちくりして腕を組み、作業の邪魔にならないように村の端っこに座り直した。


(石人間が増えたことで、良い感じに転がったこともあるんだ)