エル豚君の末裔であるオジサンと話すもう一人の若者が、口を噤んだ。
「どういうことなの?」
セーラが首を傾げて聞き逃せない「幸運」の単語を問いつめる。作業員たちは気まずそうに口を噤んだが、後はビンビンが引き継いだ。
「彼らが言っている幸運は、この埋まってしまった村に人がすでにいなかったことです」
「この村はすでに全員が石人間になって、回収された後だったんだ。幸か不幸か、皆が石人間のお家にいたおかげで人的被害はゼロだ」
ビンビンの言葉を補足したマオも茶を飲み込んで、苦々しい顔をする。しかし、石化魔王のやったことは全部マオがやったことである。マオの苦々しい顔は演技だ。
(マオの悔しそうな顔、見事だよね。演技力すごい)
セーラがマオの裏表の見事さに内心仰天するが話は進む。
高位な二人が発言したことで、許可が出たと思ったのか、エルトン君の末裔のオジサンがペラペラ話し出す。
「誰も石化魔王のおかげだなんて言わねぇよ?奴はみんな石っころにしちまってとんでもねぇ悪さ。でもなぁ、石になってなきゃ、もっとひどいことが起きてたのも……皆わかってる」



