作業員たちがマオ大絶賛を奏でる前で、隣に座るセーラに肩をこつんとぶつけたマオがコソッとセーラに秘密を語った。
「セーラの右前に座ってる男性、エルトン家の末裔だよ」
エルトン家とは、幼いマオをイジメ続けてくれた豚野郎の家のことだ。
「え?!エル豚君のおうちって公爵だったよね?!」
「セーラを罵ったあの豚が家督を継いで栄えるわけないよね。あっという間に落ち目さ」
マオがクスクス笑うと冷ややかな風が流れた気がした。だが、マオの策略で没落させたというよりも、あのバカ豚のおかげで自然に没落したのが明白だった。
(お疲れ、エル豚君。でも、マオをイジめた君が悪い)
セーラは思わぬエルトン家の没落を知ってから、淹れてもらったお茶をぐいっと口に入れてそれ以上の豚への恨み言を飲み込んだ。
「それにしても、幸運っちゃあ幸運だったよなぁここも」
「それは言わない方がいいよ、オジサン」



