「私一人いなくなっても誰も困らない。それくらい私って意味のない存在でね。
もうすぐ30歳を、私の世界ではアラサーなんて言うんだけど。アラサーの純潔なんて、出し渋るほど高尚なものでもないんだよ?」
「ごめんセーラ。僕、一生懸命セーラの話を聞いたつもりだったんだけど、何言ってるかちょっとわからない」
「え?」
セーラが顔を上げてマオの顔を見つめる。マオの眉間にはまた皺が入っていたが、その表情からは寂しさではなく怒りがこみ上げていた。
「セーラは尊いよ。セーラの純潔が無価値だなんてありえない」
「マオ?そんなただの事実に怒らなくても」
「僕の大事なものを貶されて怒らないわけないでしょ?」
マオはセーラの頬に壊れ物に触れるように優しく触れた。
「でも、僕が安易に純潔なんて欲しがったから……セーラに自分なんて価値がないって思わせたのかなって、反省した。
僕が完全に、悪かった」



