セーラが口を押えた時にはすでに遅く、漏れ出た声に、キスに夢中だった二人が弾かれたようにドアをふり返った。
「せ、聖女様!」
瓶底眼鏡をはずしたビンビンが、顔を真っ赤にして口を両手で覆う。ビンビンに熱烈な口づけていたのは無表情が過ぎる能面秘書、デュオだった。
デュオは何度か咳払いして、乱れた服を整えてセーラの前にずんずん歩いて来た。彼は取り乱すビンビンをさりげなく背に隠す。
「聖女様、今見たことはご内密にお願いします」
デュオが丁寧に美しく頭を下げるので、セーラは黒い瞳をぱちぱちしぱたいた。言いふらそうだなんて思ってない。
純潔を捧げるとはどういうものか、ちょっと見せてほしかっただけだ。
「ひとまず、お部屋に」
セーラの私室に戻り、デュオが淹れたお茶を前にして、セーラはお茶のようにお熱いお二人にテーブルを挟んだ向こう側のソファに座っていただいた。
瓶底眼鏡をかけ直したビンビンは耳を赤くしたまましゅんと膝を見つめている。デュオはビンビンの背に優しく手を添えて、セーラをまっすぐ見つめた。
「聖女様、私たちの関係をご内密にしていただけると嬉しいのですが」
「さっきも言ってたけど、どうして内緒にする必要があるの?お似合いじゃない」



