どんぐり飴にはもう近づかない!

 そう思い、私はどんぐり飴を食器棚の奥へ押し込んだ。

 この飴が原因とは限らないけど、二度とも飴を食べた直後に入れ替わったのだ。
 もう口には入れない方がいいだろう。

 奇妙な体験をした後も、日々は淡々と過ぎていった。

 あのあとも鷹也からの連絡はない。

 入れ替わって知ったのは、私が家庭を持って子供もいるという事実だったはずだ。

 もちろん私の連絡先がわからないということもあるだろうけれど、探そうと思えば探せるはずだ。実家はわかっているのだから。

 それでも連絡がないということは、探す気がないということだろう。

 それでいい。それでいいとずっと思ってきた。
 でも……。
 
 鷹也には今お相手がいないのだろうか?

 親がお見合いの席を用意したのも、年頃の息子を心配してのことだろう。
 帰国した当日に見合いの席を設けるというのはちょっとあんまりだけど。

 気になったのは、お父様の口からは光希さんの話が一度も出てこなかったということ。

 許嫁じゃなかったの?
 彼女とは今どうなっているのだろう。

 光希さん。
 私たちが別れる原因になった人。

 あれは、就職して初めての夏だった――。

 ◇ ◇ ◇