元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました

「だだ! ひなのストローはきいろなの。だだはママのピンクのストローね」
「よーし、ひな、どっちが大きなシャボン玉を作るか競争だぞ」

 イケメンな上に子煩悩……。

「ママ、さむいからしめてー」
「あ、ああ……」

 浴室のドアを閉めて、リビングに戻り、何が起こっているか整理する。
 
 会社の歓迎会から、突然見知らぬマンションに飛んだら杏子に変身していた。

 そして、杏子には旦那と娘がいた。

「ここで、杏子は結婚生活を……」

 そうか。何もかももう遅かったんだ。
 あれから4年も経っているんだもんな。

 俺たちは29歳。結婚して子供がいてもおかしくない。

 可愛い子だった。杏子にそっくりな……。
 俺が杏子と結婚できていたら、俺にもあんな可愛い子がいたかもしれないんだ。

 頭の中であの女の子を抱っこした杏子が浮かぶ。
 俺が欲しかったもの。
 でもそれはあの男のものなのか……。

 喉の奥が痛かった。
 こんな大きなアメを食べているからだ、きっと。
 いつもならすぐに噛んでしまうアメを、噛めないほど動揺していた。

「……ウッ……ウッ……」

 アメのせいだ。アメのせいだ。
 俺は泣いてなんかない。
 喉が痛いのはアメのせいなんだ。
 しかし、こみ上げてくる涙を止めることはできなかった。