ご飯を食べさせ、週末だからと、ひなのお気に入りのアニメを一緒に見る。

 アニメに夢中になると、食べることが止まってしまう。そこが難点なんだけれど、夢中になっている様でさえ可愛い。
 
 ほどけた髪がご飯に付きそうになっていたので、耳にかけてやった。

 そうしていつも触ってしまうひなの耳たぶ。
 ぷくっと垂れ下がっている、いわゆる『福耳』なのだ。

 見る度に思い出すのはひなの父親、鷹也のこと。

「この福耳、そっくりだわ……」
「んー? ママなんかいった?」
「え……ううん、何でもないよ」

 心の声が漏れていたようだ。
 ひなには鷹也のことを一切話していないのに。
 
 今のところ父親のことは聞かれたことがない。
 母子家庭にしては周りに人がたくさんいるからかもしれない。

 それに保育園にはうちのような母子家庭の子が何人かいて、父親がいなくてもてもあまり気にならないようだった。

 でも、いつかは聞かれるかもしれない。父親のことを。
 名前は言わないけれど、鷹也の人となりは言うつもりである。

 私たちが結ばれることはなかったけれど、鷹也は私の人生で唯一愛した人だから。

 光希さんとの生活を邪魔することはできないから、ひなの存在を告げるつもりはない。
 ひなは私が勝手に産んだのだから、絶対に迷惑はかけられない。

 ひなには申し訳ないと思う。でも父親がいない分も私がひなを大切にする。ありったけの愛情を注いで幸せにするつもりだ。