そこから俺は同窓会の幹事に連絡を取り、杏子に連絡してもらえないかと頼んでみた。

 しかしそいつも同じく連絡がつかないという。
 
 しばらくして、その幹事から話を聞いたという、杏子と仲の良かった女子から連絡があった。

 少し前にメッセージがあったと言うのだ。
 杏子が会社を辞めて他県へ転職することになったと。

 これには驚いた。杏子の就職先は大手住宅メーカーで、現場監督の仕事も杏子は誇りをもってやっていたはずだった。

 何故辞めた? 実家か? 実家で何かあったのか?

 しかしその後彼女もメッセージを送るも、既読になることはなかったという。

 つまり、女友達まで音信不通になったというのだ。

 アカウントを変えた? それしか考えられなかった。
 
 そこで初めて、誰もがメッセージアプリを通じての連絡先しか知らないことに気づいた。

 俺たちは携帯電話の番号を知らないのだ。
 もちろん、実家の固定電話も知らない。

 元々、やりとりのほとんどはメッセージを打ち込むことで通じ合っていたから。