ひょっとして、ロスへ出発する日だというのに鷹也と連絡が取れないから何度もメッセージを……?

 ズキッと胸が痛んだ。
 光希さん。鷹也はやっぱりまだあの人と……。
 それなのにどうして私と?
 
 言いようのない罪悪感が私を襲う。
 一度身を引いたのは私。
 鷹也の隣には別の女性。
 もう戻れるはずなかったのよ。
 
 昨夜のことは一夜の過ちだ。鷹也だって久しぶりに会って、ちょっと懐かしくて、ちょっと羽目を外しただけ。
 私も今更元サヤに戻れるなんて思っていない。
 だってこの人とは住む世界が違うんだから……。
 
 鞄を手に、忘れ物がないか確認すると、静かにそっと部屋を出た。
 置き手紙は残さない。
 きっともう、会うこともないだろう。
 これは初恋を引き摺っていた私に、たった一夜だけ訪れた魔法のような時間だったのだ。
 鷹也を好きだった。愛していた。でももう思い出にしなきゃね。



 「バイバイ、鷹也……気をつけて行ってらっしゃい。………………幸せになってね」