『杏子』

『杏子』

 んー?
 誰かが私を呼んでいる。

『杏子! 起きなさい!』
『え、ええ? おばあちゃん⁉』
『そうだよ。もうすぐ上に召されるんだ。その前に杏子と話したくてね』

 これは夢? 私さっき寝たのよね?

『そうさ。これは杏子の夢の中だよ』

 夢……の中に会いに来てくれたの?

 ハッ!
 
『おばあちゃん! 会いたかった!』
『ハハハ……ばあちゃんも会いたかったよ』
『おばあちゃん、突然逝っちゃうんだもん。私、いっぱい泣いたのよ? あの時もっとおばあちゃんとお話したら良かったって――』
『突然で悪かったね。でもばあちゃんもさすがに知らなかったんだよ。自分が死ぬ日までは』
『そうなの? じゃあ仕方ないのか……』
『そうさ。人はいつか死ぬ。ばあちゃんの順番がやっと来ただけのことだよ』

 おばあちゃん……。