もう一度右側を見た。今度は夜景を見るのではなく、ガラスに映っている自身の姿を見るために。

「た、かや……?」

 暗いガラス窓に映った自分の姿に驚きを隠せない。
 私は思わず顔に手をやった。

 嘘だ。あり得ない。さっきまで自宅でどんぐり飴を食べていたのよ?
 そんな私が、どうして鷹也になっているの⁉

「ど、どうしたんですの? ちょっと、鷹也さん? そんなにお顔ばかり触って――」
「あ、あの!」
「……はい?」
「ちょっと…………トイレに」
「ど、どうぞ? 遠慮なさらずに――」
「し、失礼します!」
 
 立ち上がり、店を出てすぐのところにあるトイレに入る。
 鏡! 鏡!

「信じられない……」

 トイレの鏡には、鷹也がいた。