「は、はい……」
「鷹也!?」
「……杏子?」
「もうっ! どうしてどんぐり飴食べたのよ!?」
「は?」
「甘いもの嫌いなくせに、どんぐり飴食べないでよ!」
「な、なんでそんなことを……」
「それより、今一人!?」
「あ、ああ。いや、今は一人だけど、あと10分で出るってメッセージが――」
「10分……。ここからじゃ間に合うかどうか……」
「来るのか!? こっちに!?」
「当たり前でしょ! ここ駅上だし、地下鉄で二駅。ギリギリ間に合うかも」
「でも、10分後なら元…………いや、待ってる」
「そこ動かないでよ!」

 プツッと電話が途切れた。

 そうだ。杏子がここに来たら俺は杏子に会えるのじゃないか?
 そんな思いがとっさに浮かび「10分後なら元に戻っているのではないか?」という言葉は呑み込んだ。

 ドキドキする。
 杏子が(俺の体が)ここに来る。
 久しぶりに杏子と会えるんだ!

 でもそれとは別に、杏子の家族を見ることになるのだろう。

 複雑な気持ちではあるが、それよりも会える期待の方が勝っていた。

 どちらが先に到着するだろうか。