麗奈がこうして赤井社長の残したダイイングメッセージを解いた刹那、月斗も思ったのだ。

「この暗号の数字、何か国に関係がある数字ってことかな?」

月斗はすぐにスマホを取り出した。



そして、ついに迎えた三月一日。三年生はそれぞれの道を歩いて行くことを喜びながらも悲しみ、二年生や一年生は仲のよかった先輩との別れを寂しくも見送る。誰かの笑顔と、誰かの涙、体育館や廊下は二つの感情が入り混じっていた。

そんな中、暗号が書かれた紙を持って月斗は紫乃から指定された場所へと向かう。そのドアを開けると、紫乃は長い髪を靡かせてそこにいた。まだどこか冷たい風が部屋に入り込んでくる。

「あら、ちゃんと暗号が解けたのね」

「はい。桜木先輩のミステリー小説で被害者が残したダイイングメッセージを見て、ピンときました」

月斗は紫乃の目の前に、あの日貰った紙を広げる。そして、見つけ出した答えを言う。

「この数字の並び方は、どう考えても独立記念日や統一記念日には見えません。国関係で数字が他に登場するものといえばーーー緯度もしくは経度ですよね?」

90. 4336は、ヒマラヤ山脈の東の端にある仏教王国・ブータン緯度だ。その下の8.484444は、西アフリカの西部・大西洋岸に位置するシエラレオネの緯度、その下のー7.4784は、オセアニアに位置する九つの島から成っているツバルの緯度である。

出てきた三つの国の最初の文字を取ると、「ぶしつ」となる。そのため、月斗はこの文芸部の部室にやって来たのだ。