『絶対に大丈夫』なんて自信は、ない。


「葵。お母さんは、あなたのことが心配で……」

「わかってるよ。ちゃんと検査するって」


しつこく検査の催促をする母の言葉を遮って、私は荷物を取りに2階へと駆け上げった。

母が心配する気持ちは、充分にわかっている。

でも、私の気持ちは?
病気だということをと告げられ、目の前が真っ暗になる感覚。

その気持ちは、他人には絶対にわからない。

例えそれが家族であっても、治療をするのは私なのだから。


「じゃあ、仕事行ってきます」


リビングにいる母の顔も見ずに、私は靴を履いて家を出た。

……やっぱりダメ。
病気のことを考えると、どうしても気持ちが前を向かない。

心配する母の気持ちですら、素直に受け取れなくなる。
「心配してくれてありがとう」って、言えたらどれだけいいだろう。

でも、なかなかそう簡単にはいかない。
風邪やケガといった、飲み薬を処方して終わりではないのだから……。


「……あれ?」


気か付けば、涙が頬を伝っていて。

涙を拭いながら、職場である病院までの道のりを歩き続けた。


* * *

「えっ? 今日、受診したいの?」

「はい……少し心配で」


そう言った私の申し出を、快く聞き入れてくれたのは看護師の香川(かがわ)さん。