でも、舞い上がっている俺とは裏腹に、葵の表情は曇っているように感じる。

しばらく沈黙が続いた後、彼女が顔を上げて俺の顔を真っ直ぐに見つめた。


「……匠真は、私のどこが好きで一緒にいるの?」


「え?」

「私、ずっと疑問だったんです。どうして私が好きになったのか、って」


……なんだ。そんなことか。

いや、違う。
俺にとっては〝そんなこと〟かもしれない。

でも、葵は違うんだ。

今の葵は、未来が見えない状態だ。
治療も順調ではあるが、それも確かではない。

心の底から自信を持って『もう心配いらないよ』と、言うこともできない。

だからこそ、葵は未来を見据えて不安になっていたのだろう。


「葵。前にも言ったけど、俺は葵が病気でなくても告白するつもりだった」

「……それは、覚えてます」

「仕事熱心な葵も、治療を頑張る葵も、全部が好きなんだ」


カッコつけて面と向かって言たけれど、かなり恥ずかしい。

でも、そう言うことで葵が安心するのなら俺はどんなことだって口にする。


「それに……付き合ってから、可愛いところもいっぱいあって、さらに好きになった」

「えぇ……可愛い?」


少しだけ葵の頬が赤染まったのを、俺は見逃さない。


「あぁ。さっきみたいに、紅茶1つで喜んでくれたり。ほら、今も……」