そうか。まだコーヒーは口にしていないのか。

そういえば、披露宴の食事のときも、紅茶を飲んでいたっけ。


「すまない葵。ミルクは常備してなくてな。紅茶でもいいか?」

「はい。大丈夫です」


「了解」と返事をして、俺はポットでお湯を沸かした。
待っている間、同期の結婚式の引き出物に入っていた紅茶を取り出す。

このときの結婚式も、よかったな。
まだそんなに時間は経っていないはずだけど、やけに懐かしい。

結婚式のことを思い出しながら、箱から紅茶パックを取り出してマグカップに入れた。


「……手伝います?」


突然、背後から葵の声がした。
驚いて振り向くと、訪問着姿の葵がキッチンに立っている。

あぁあ……やっぱりダメ。
いつもと違う彼女の姿は、可愛くて仕方がない。


「大丈夫だよ。それより葵、こっち来て」

「……!?」


葵の手を引いて、俺はソファに腰を下ろした。

いきなりの出来事で驚いている彼女は、目をまん丸にして俺を見つめている。
……あぁ、もう。和服姿は、反則だろう。


「ごめん葵、ちょっと我慢できないわ」

「えっ!? 匠真っ……んんっ…!?」


葵の頭をグッと引き寄せて、唇を塞いだ。

「んっ……」と唇の隙間から、葵が艶やかな息を漏らす。