それから、どれくらいたったのか。

「ごめんね、急に泣き出して」

 落ち着いた私は、苦笑いしながら朝比くんに言った。

「じゃあ、みんなのところに帰るか」

 歩き出した朝比くんの隣に並んで、私も歩く。

 湯豆腐屋さんに向かいながら、朝比くんは三人に何があったのか教えてくれた。

 まず、事前の宣言通り、美花と村上くんは私たちを二人きりにすべく漬物屋さんを離れようとした。

 だけどそこで、朝比くんが歩き出した二人に気づいちゃったんだって。

 慌てて追いかけて通りの真ん中まで来たそのとき。

 外国人の団体の人たちがやってきて、そのまま三人は清水寺のほうへ流されちゃったんだそう。

 ちょうどそのタイミングで私が店から出て、三人とは反対に歩き出したから、一人だけ迷子になっちゃったんだ。

「連絡もつかないし、マジで焦った。紅月に何かあったらどうしよう、って」

「ごめんね、スマホの充電が切れちゃってて……」

 そう言ったとき、朝比くんのさっきのセリフが頭の中でリピートされた。

「……ねえ、一個聞いてもいい?」

「うん?」

「さっきの、その、『好きな女子が』って、どういう――」